これのおまけみたいな


 和太鼓が鳴り響く斬新なダンスパーティーは未だ終わる気配がない。そもそもダンスパーティーなんて盆踊りくらいしか参加したことないからどのくらい踊るのか見当もつかないのだけど。盆踊りよりも体力使いそうな欧米流社交ダンスを踊り狂う鶴見中尉と江渡貝さんを部屋の片隅で体育座りして見守っていたら暫くしてひと段落したのか、二人が手を離した。頬杖ついてぼーっと座っていたら鶴見中尉が近づいてきたので漸く帰れるのかなと思い立ち上がったが、そんな私に向かって鶴見中尉は右手を差し出してきた。

「……な、なんでしょうかその右手は」
「お嬢さん、私と踊っていただけますか?」
「……え?」

 思いもよらない展開に固まっていたら、鶴見中尉はにこりと笑って私の右手を取った。拒否権ないんですね、わかってましたけど。鶴見中尉は空いている左手で私の持っていた小銃を手に取り、壁に立てかけてしまう。私を引っ張るそれは物柔らかなようで強引だ。

「いや、鶴見中尉殿、私、ダンスはちょっと……盆踊りしか」
「心配ないから、私に合わせてついてきなさい」

 あれこれ言い訳しても全ていなされてしまい、いつの間にか私たちは数えきれないほどの剥製に囲まれたダンスホールの中央に立つ。鶴見中尉に誘導されるまま私は左手を彼の二の腕へ置いた。そして鶴見中尉の右手が私の背中へと回される。……欧米のダンスってこんなに密着するんだ。心臓がどきどき煩いのは断じて鶴見中尉への浮気心なんかじゃない。けれど、甘い低音で「私から目を離さないように」なんて囁かれてしまうとまるで呪いでもかかったみたいに逆らうことができなくて、視線は鶴見中尉に釘付けになる。おちゃらけるのが許されないような、そんな大人の雰囲気が漂うその空間に再び和太鼓の重低音が響き渡った。誠に遺憾千万である。空気読めよ浩平。

仮令、此れが彼の腕なら