※三島くんのキャラは100%捏造です。




「お前も一応女子なんだから、もう少し所作には気を配った方がいい」
「三島先生!所作なんて気にしてたらこんな男所帯で生きていけないと思います!」
「……先生はやめろ。一生ここにいるつもりじゃないんだろう?」
「三島先生!足が痺れました!」

 はあ、と大きなため息を吐く三島くんは説教を諦めたようだった。三島くんは同じ部屋で寝泊まりする内務班の一員だ。整った目鼻立ちに加えて背丈も大きい三島くんはそれだけで結構目立つ存在なのだけど、噂によるとちょっと良い家柄のお坊ちゃんらしい。あくまでも噂ではあるが、彼の上品な物腰はそれに説得力を与えているように思う。ガサツな私に度々注意してくるのも育ちの良さ故なのだろうか。私の寝具の畳み方や着替えがどうやら三島くんには納得いかないらしくて、こうやって就寝前毎日のように正座させられていた。同室の古年兵たちにとっては面倒な指導を三島がやってくれてラッキーくらいに思っているのか特に何も言ってこない。

「三島くんて本当に真面目だよね」
「……普通じゃないか?」
「その返答が十分真面目な証拠だよ」
「そういえば、何では俺のことだけ『くん』付けなんだ」
「うーん、なんとなく、三島くんは呼び捨てじゃない気がする」
「お前の理論はよくわからん」
「それよりさあ、最近釦がよく取れるんだよね……付け方が悪いのかな」
「どれ、見せてみろ」
「この辺なんだけど」
「……、お前なあ……」

 第二と第三釦あたりがすぐ取れるんだよ~と三島くんに自分の襯衣を見せたら頬を赤く染めて無言で返却されてしまった。いや、見せろっていったじゃん。何赤くなってんの?私の襯衣は卑猥物か。ムッとして再度襯衣を押し付けたら隣で見ていた古年兵が「おい、察してやれよ、三島も男なんだぞ」とにやにやしていて、はた、と自分の胸元を確認した。なるほど、三島くんが急に照れたのも、釦がすぐ取れるのも、この成長した胸部が原因か。戦争行ってたから気にしてなかったけど、そういえばここ数年で大きくなっていたかもしれない。

「……あ、ごめん」
「なんでお前はそんなに冷静なんだ!?」
「え?今更じゃね?むしろ三島くんが慣れてよ」
「慣れるか!」

 あ、でも二階堂みたいにはならないでほしいなあ。男女平等と言えば聞こえはいいが、あの双子は容赦なさすぎる。二階堂兄弟は特殊として、第七師団の中で私を女扱いするのは三島くん以外でいえば鶴見中尉と月島軍曹くらいだ。そう考えたら三島くんみたいなピュアな反応は貴重だよな……。三島くんは律儀にも取れかけた釦をこれでもかってくらい何回も縫い付けてくれていた。なんて良い奴。

「と、とりあえず、しっかり付け直しておいたけど、そんなに頻繁に取れるなら号数上げてもらった方がいいかもな」
「三島くん」
「……なんだ?」
「やっぱり三島くんはそのままでいてね」
「何の話だよ」

僕らの青春は弾丸と共に過ぎてゆく