「ちょっと誰なのよこれ、誰ってか何なのよこれ私と言うものがありながらあああ!」
「ちゃん落ち着いて!どうどう!」
「あっごめん一度やってみたかっただけでそんなに意味はない」
「……ああ、そう……」
「でもマジでなにこれ?目がキラキラしてるのがちょっとかなりキモイ」
「貴女、突然来て何なの?ちょっと失礼じゃない!」
「うおっ!?喋った!!?」
いつものノリで幼馴染の寺田くんの家に行ったら変なピンクのやつがいた。あの寺田くんの家に機械とはいえ来客があったことに私は今年一番驚愕し、一人昼ドラ劇場を繰り広げようとしたが数秒で満足して雑にぶん投げた。ウィーンと動くそのピンクのやつは急に喋り出し文句を言ってきたので私は驚きと気持ち悪さが同時に来やがって混乱する。寺田くん……モテないからってとうとうこんな無機物と……わざわざこんなオイル臭そうなやつ選ばなくたっていいのにむしろ探す方が大変だろどうやって知り合ったんだナンパか?と憐れみと好奇心が混ざった目で寺田くんを見る。当然のように「この人はラヴ江さんていうんだ」と紹介され、私はつい可哀想な子を見る目になってしまう。寺田くん……モテなさすぎて頭がちょっとアレになってしまったのね……何で私に相談してくれなかったの、私たち友達でしょ。
「違うわ、セクシーボディラヴ江よ」
「……まあある意味ダイナマイトボディではあるけど」
爆発しそうではあるよね、と付け足そうと思ったがなんとか思いとどまる。その代わり、どこがセクシーボディだよあんたがセクシーボディなら私なんかセクシーすぎてR18ボディだわ舐めてんのか無機物がとガンを飛ばしたら向こうもそのキラキラおめめで睨み返してきた。
「……で、これ何なの?」
「セクシーボディラヴ江よ」
「ちょっと黙っててくれる」
「ラヴ江さんはロボットだよ」
「……寺田くんがモテなくて悩んでるのは知ってたけどさ、だからって人外の物に手を出すとはさすがの私も予想外だったよ」
「い、いや違うよ!?」
「どこが違うんだよもうこれ現行犯だから。さすがに私もフォローできないよ」
「違うって!結婚相談所に電話したつもりが間違ってロボット研究所にかけちゃって……」
「そして紹介されたのか、ロボットを」
「違うってば!……いや合ってるけど」
「合ってんのかい」
「いやそこはちょっと齟齬があったというか」
「私だってこんなメガネこっちから願い下げよ!」
ロボットにまで願い下げとか言われてる寺田くんって……と同情すればいいのか呆れればいいのかよくわからない状況になってしまったがよくよく話を聞くとこのラヴ江とやらが寺田くんにナンパの仕方を伝授してあげるとかいう展開になっているらしい。それ大丈夫なのか?今のところ不安しかないんだけど。私が指南した方が1ミリくらいはマシなんじゃないのって思ってるのは多分私だけじゃない筈だ。まあ押しに弱い寺田くんのことだから断りきれなくてラヴ江が勝手にやる気満々なだけなんだろうとは思うが。ここは私がひと肌脱ぐべきだろう。
「ちょっとあんた、メガネメガネって馬鹿にしてんじゃないわよ」
「メガネにメガネって言って何が悪いのよ!」
「寺田くんは確かにどうしようもないヘタレメガネだけどな、外したらすごいんだぞ舐めんなよ!」
「そんな漫画みたいな展開あるわけないじゃない!」
「あるわばーかばーか!でもあんたには見せてあげないからね見ていいの私だけだから!」
「……ちゃん……それ、」
ん?私変な事言った?と横で女の子みたいにほっぺたを赤くした寺田くんを見たあとで自分の失言に気付いた私は「違う今のは言葉の綾ってやつ!」と必死で弁解する羽目になった。
両者重傷につき試合は中断となります