※三島くんのキャラは100%捏造です
突然だが私の同僚はモテる。すごーーくモテる。どのくらいモテるかというと、朝出勤すると彼のデスクには可愛らしいお菓子の包みやら(たぶん手作りだ)ふわふわパステルカラーの封筒やら(ラブレターかどうかはわからない)が複数載っているというのが日常茶飯事な程度には人気があった。隣の席である私は必然的にその光景を見せつけられるわけで、5分ほどあとに出社してくる三島くんに「おはよう、今日も連続プレゼント記録更新したよ」と報告するのもまた日常風景だ。毎日がバレンタインデーかよ。と毎朝ツッコむのにも飽きた私はこのプレゼントが何日続くのか数えることにしていた。
プレゼント日報を聞いた三島くんが「おはよう、」と朗らかに席に着いた。朝から笑顔が眩しい。ノーコメントなのもいつものことなので、私は気にすることもなくパソコン内のアプリやらシステムやらを次々に開いて始業の用意を始める。ちらりと横目で様子を伺うと、三島くんはデスクに載っていたいくつかのお菓子、手紙の類をひとつずつ鞄へ入れていた。
「これ使う?」
ぺたんこのビジネスバッグではせっかくのプレゼントが潰れてしまいそうだ。私はたまたま鞄に入っていたエコバッグを三島くんへ差し出す。落ち着いた和柄がプリントされた、ナイロンのやつだ。三島くんはその大きな瞳を二度瞬いてからエコバッグに手を伸ばした。
「ありがとう」
「それあげるから、今度から鞄に入れておきなよ」
「……いいのか?」
どーせペットボトルに付いていたおまけだから、と補足する。
「この前ももらったのに、なんか悪いな……」
「あー……そういえばそうだったっけ」
彼の台詞を聞いて、数か月前にも同じようなやり取りをした記憶を甦らせた。たしかあの時も、ペラペラのエコバッグを「どーせペットボトルに付いていたおまけだから」と一言一句違わず同じことを言いながら手渡したような。
「あっちは家で使ってるんだ」
とっくの昔に捨てたかと思っていた私の脳内を察してか、三島くんが苦笑した。なんだか不用品を押し付けたようで心苦しい。
「私のことは気にしないで、いらないなら捨てていいからね」
「ありがとう。でも、こういうのはあると便利だからな」
「まあ……それはわかる」
三島くんは案外捨てられないタイプなのだろうか。かくいう私もまだ使えそうなものはどうしてもモッタイナイが強くてなかなか捨てられないタイプだった。貧乏性なのである。その癖ペットボトルにおまけが付いていたら「なんかお得!」などとつい手に取ってしまうのだから救いようがない。三島くんには言ってないけれど、私はエコバッグの類をまだ複数枚自宅に保管していた。どれもこれもおまけやノベルティだ。だからこう、純粋に感謝をされると胸のあたりがチクチク痛むのだった。
「そういえばこの前の子とはうまくいきそうなの?」
この前の子、とは私が紹介させられた他部署の女の子のことだ。同じ会社だがオフィスが違うので、私も実際会ったのは2回だけなのだが。「紹介させられた」と言うと語弊があるかもしれない。正確には、私の同僚から『後輩が三島さんの連絡先が知りたいって言ってるから協力してあげて』と頼みこまれ、よく知りもしない相手を紹介するのはなんだか詐欺みたいで嫌だからもう一人誘って4人で遊びにでも行こうと提案した末、私、三島くん、後輩の女の子、そして私たちの先輩である野間さんという謎メンツで映画を観に行ったというのが事の顛末である。ちなみに野間さんは三島くんのご指名だ。どうやら仲が良いらしいというのはその時初めて知った。が、当の野間さんは渋々参加したらしく、必然的に彼のペアとなった私は正直めちゃくちゃ怖かった。
そんなこんなで最終的には無事連絡先を交換したみたいで、今度二人で食事に行く約束をしたのは教えてもらったのだが……続報がなく密かに気になっていたのだ。私にとっては世間話のひとつにすぎなかったのだけれど、それを聞いた三島くんが一瞬ぴたりと動きを止めたのを私は見逃さなかった。
「なんか……思ってたのと違うって」
「振っちゃったの?」
「いや、俺が振られた……のかな」
「三島くんでも振られることあるんだ」
「所詮そんなもんだよ。大体、一言も会話したことのない相手をそんなに簡単に好きになるもんか?なったとしても、それは頭の中で自分に都合の良い理想像を作り上げているだけだろ。だから実際に生身の俺を知って勝手に幻滅するんだと思う」
「三島くんは普通に良い人なのに、なにがダメなのか私にはわからん」
「……そう言ってくれるのはだけだよ」
「そんなばかな」
モテる人にはその人なりの悩みがあるらしい。私からしたら羨ましいとさえ思ってしまうけれど。そもそもモテ期を経験したこともないのだから。……そういえば小学校低学年の頃、親戚のおじさんたちが猫可愛がりしてきてあれはあれで幼心に困惑した気がする。会うたびにお小遣いをもらい、欲しかったゲームをもらい、私自身は嬉しかったものの母親が伯父たちに苦言を呈していた。まさかあれが人生初のモテ期だとでも言うのか。なんだか釈然としないまま始業ベルが鳴り、朝礼が始まる。
実は私のチームには三島くん以外にもモテる男たちが揃っていた。配属された当初「ここは顔採用か?」と疑ってしまった程に。しかしそのほとんどは遠巻きに憧れの視線を向けたり、仕事でのちょっとした関わりに仲間内でキャーキャーするだけである。鶴見さんなんかはその筆頭だ。顔の良さもさることながら、その物腰の柔らかさ、部下へのさりげないフォローなどで男女問わず人気がある。もはやアイドルみたいなものだ。かくいう私もファンの一人だった。
尾形さんの人気もかなり根強い。無愛想だが仕事はしっかりこなすし、一言余計なのが玉に瑕ではあるものの周りをよく見ていて指示も簡潔で的確な、怖いけど頼れる上司ってやつだ。そういえば、先日社内随一と言われる美女が尾形さんに告白して玉砕したらしい。それもあってか益々尾形さんは高嶺の花みたいになっていた。
個人的に少し意外だったのは門倉さんの人気の高さだった。どうやら彼のドジっ子気質がたまらなく母性本能をくすぐるらしい。それに加えてのらりくらりとしているようで実はやることはしっかりやっているというのがポイントだとか。ただ、そう言っているのは私と同年代の比較的若い女性社員たちで、歳の差の開きが大きいせいなのか恋人に立候補する者はまだ現れていないようだ。私にはよくわからない世界だったので気のない返事をしたら「さんにはまだ早かったか」などと軽くディスられてしまった。
そんな濃い面子の中で、毎日のようにプレゼントをもらったり女子の集団から食事に誘われているのは三島くんだけだった。私が思うに、三島くんは丁度良いのである。彼の適度な気さくさやノリの良さは鶴見さんたちから感じるような手の届かない高嶺の花といったイメージをうまい具合に隠していて、とっつきやすい印象が強い。会いに行けるアイドルなんてのも流行ったりしたけれど、似たような感覚だろうか。
休憩時間になると、三島くんが缶コーヒーを奢ってくれた。エコバッグのお礼らしい。おまけだから気にしなくていいのに、真面目な男だ。オフィスの休憩スペースでその甘さ控えめな缶コーヒーを飲みつつ二人で立ち話をする。
「総務の子たちが合コンしたいって言ってるんだけど、どう?……さすがに彼女と別れたばっかりだから気乗りしないか」
「気にしなくていいよ、まだ付き合ってはいなかったし」
「あ、そうなんだ……」
「も来るのか?」
「まあ、一応ね」
「……なあ、今日の夜、飯に付き合ってほしいんだけど」
いや合コンは……と口を開きかけたが「合コンの話は一日考えさせて」と先手を打たれてしまったので大人しく頷いておく。
三島くんと二人でごはんに行くのは珍しいことじゃない。繁忙期を無事乗り越えられた打ち上げと称して毎月のように飲みに行くし、今日みたいになにもない日でもその場のノリで誘ったり誘われたりもよくあることだ。周囲からは羨ましがられることも多いけれど、私的には別にただ同僚と食事に行くだけで特別なこととは思っていなかった。私にとって三島くんは同期であり、それ以上でもそれ以下でもない。たまたま入社時期が一緒で、たまたま配属先が一緒だった。それだけのことだ。
繁忙期でもなければ定時前には帰り支度を終わらせ、チャイムとともに席を立つことも可能な私たちは、終業5分前にすべての業務を片付けて悠々と日報の作成を行った。チャイムが鳴った瞬間、待ってましたとばかり電話を留守電に切り替える。
「お先に失礼しまーす」
周囲を見渡して決まり文句を口にすると「お疲れ様~」という声が方々から聞こえ、私は頭を下げてエレベーターホールへ向かった。三島くんは女子の集団に捕まっていた。これもよくあることなので特段気にすることもなく「先にお店向かってるね」と携帯にメッセージを残して会社を出る。店の前で待つこと5分。三島くんは小走りで現れた。
「意外と早かったね」
「用事あるからって、すぐ抜けて来た。……声かけてくれればいいのに」
「いや無茶言わないでよ……邪魔したら私が恨まれかねないんだから」
お店に入ってすぐ生ビールを2つ注文し、おつかれー!とジョッキを合わせる。最初は苦手だったビールも今ではこうして難なく飲めるほどになった。だからと言って大好き、というわけでもないのだけど。私は適当に注文したおつまみを食べつつビールをチビチビやる。三島くんと話すのは「今日は変な電話があった」だとか「営業部からの無茶ぶりが酷い」みたいなとりとめもないことばかりだ。愚痴でもなんでも、うんうんと否定せずに聞いてくれる。だからこちらもつい甘えてしまうわけなのだけど、果たして三島くんの方はそれで楽しいのだろうか。よくよく考えてみれば、いつも話の主導権を握っているのは私だ。仕事の愚痴や日常生活のあれこれといった他人からすれば果てしなくどうでもいい話題を延々話して、三島くんが相槌を打ちながら時々ツッコミを入れてくる。
「三島くんはさあ、私と話してて楽しいの?」
酔った勢いもあったのかもしれない。気付いたら尋ねてしまっていた。
「楽しいけど。なんで?」
「いや、ほら……いつも私の話ばっかりしてて悪いなって」
「そんなことないだろ。俺だってくだらないことたくさん聞いてもらってる」
正直、ほっとした。これで「ずっと言おうと思ってたんだけど、すごくつまらん」などと衝撃のカミングアウトでもされたら立ち直れなかったかもしれない。……いや、三島くんは人を傷つけるようなことは言わない男だ。恐らくもっとオブラートに包んだ言い方をするだろう。ともかく、少しだけ気が軽くなった私はすっかり泡の消えたビールを飲み干した。
「じゃあ三島くん、なにか話して、どーぞ」
「なんだよその無茶ぶり……」
「でも、なにか話があったんじゃないの?」
「……」
三島くんが視線を個室の隅にすすっと滑らせ、ジョッキを口元に上げる。しかし口を付けることなく「は、好きな男とかいないのか」と呟いた。
「いないけど……え、もしかして三島くん好きな子でもできたの!?誰?私なにか協力した方がいいかな!?私こう見えて結構顔広いよ」
三島くんのおかげで、だけど。
「いや、それはいい……」
普段女子に囲まれまくっている割に私の前では恋バナなど一切しないのでつい興奮してしまったが、当人の反応が至って冷静だったために前のめりになっていた姿勢を元に戻す。なーんだ、恋愛相談じゃなかったのか。少し残念だがどう考えても私より経験豊富そうな三島くんから相談を持ち掛けられたところで、的確なアドバイスができるとは思えない。
「あっ、だから合コンは断りたいってこと?普通に言ってくれれば良かったのに」
「合コンは参加するよ」
「……いいの?好きな子は?」
「うん。みんなで飯食うのは好きだし、大丈夫」
私は気にしてない風を装ってふーん、と言いながらタッチパネルでカクテルを注文した。めちゃくちゃおせっかいなのは承知の上だが、三島くんには一歩下がってついてくるような大和なでしこが似合うと思う。実際にどんな女性が好みなのかなど知らないし話したこともないのだけれど、普段の穏やかな彼を見ているとなんとなくそう思うのだ。
結局三島くんが突然私をごはんに誘った理由はわからず仕舞いで、彼の好きな子(仮)も不明なままこの日は解散した。私の方も恋愛に関する話題をつっこんで聞くのが恥ずかしかったというのもある。他人の恋バナを聞くということは、必然的に自分もしなければならないというのは女子会でよくある風景だろう。恥ずかしいなどと宣いながら本当は話したくてたまらないし、賛同してほしい。それを誤魔化すため、或いは更なるときめきを求めて他者にも話題を振る。ただしこれは女子会においての話なので、三島くんもこうだとは言い切れないのだけど。……三島くんとはたくさん会話をしてきたはずなのに、恋バナなんてこの日が初めてだった。なんだか不思議だ。
***
合コンで出会った、第一印象のあまり良くない男となんやかんや縁があって最終的に結ばれる――みたいなドラマはあるけれど、現実世界にそんなうまい話などない。少なくとも、私の知っている範囲では。自分自身、だいたいが三島くん目当ての女子に懇願されて渋々出席することが多いというのもあるけれど、どうにもこう……ピンとこないのである。友人にぼやけば必ずと言っていいほど「そりゃ毎日隣の席に良い男が居れば目も肥えるよね」などと乾いた笑いを向けてくる。比べているつもりなどないのだけれど、やっぱり無意識のうちにそうしてしまっているのだろうか。私は自分の隣に座る初対面の男性と世間話をしつつ考える。この人の落ち着いた雰囲気は嫌いじゃない。相槌も煩くないし、距離感も丁度良かった。……それでも、何故かピンとこないのだ。少し離れた場所に座る三島くんをチラ見すれば案の定女の子2人に脇を固められていた。あの笑顔には見覚えがあるような。いつものように優しそうな微笑を浮かべているのにどこか表情が硬い。
「もしかして、さんも三島さんのところに行きたいんですか?」
「……あ、いや、相変わらず女の子に囲まれてるなと思っただけで」
「ほんとに……羨ましいですよ」
「あはは……」
「さんは彼氏とか居ないんですか」
「いないですね」
「好きな人とかも」
「はい。もういっそのこと猫ちゃんでも飼おうかと」
「いいですね、猫」
「猫が可愛すぎて会社に行きたくなくなるかもですね」
話題は会社のことから趣味の話へと移り変わっていった。この皿田さんという人は最近ドリップコーヒーにハマっているらしい。豆も自分で挽いたものを使うのだとか。一口にドリップコーヒーといっても淹れ方や道具等も様々のようで、飲み物にこだわりのない私にはチンプンカンプンだった。
「普段自販機の缶コーヒーしか飲まないのでよくわからないんですけど、奥が深いんですね」
「そうなんですよ。一度沼にハマると大変で……よかったらうちに来て飲みます?」
「えっあ、その」
「あ、も、もちろん冗談ですよ」
「……で、ですよねーあははは」
一瞬空気が固まったのがわかった。冗談に決まってるんだから適当に流しておけばよかったのに。私は後悔と罪悪感とでぐちゃぐちゃな感情をお酒で喉奥に流し込む。人と話すことは嫌いではないのだけれど、恋愛が絡むとどうにもやりづらい。ましてや今は建前上合コンの真っ最中だ。メインは三島くんと総務の女子だろうけど、それ以外のメンツだってそっち方向に話しを持っていくのは自然な成り行きである。そんなことにも頭が回らなかっただなんて不覚だ。飲み込んだはずの後悔が再び心を支配していく。なんだか帰りたくなってきた。……あ、でも料理は美味しいな。などと現金なことを考えつつテーブルにグラスを置いたとき、私の頭上に影が差した。
「帰るぞ、」
右肩に自分の黒いバッグと私のベージュのバッグをぶら下げた三島くんがぐい、と私の腕を引いて立たせようとする。なにか怒って……る?確信はないものの明らかに雰囲気が違う。
「えっ、ちょ、なに」
突然すぎて驚くことしかできない。それは自分だけではなかったようで、参加者全員の視線が私たちに集中していた。制止することも忘れた私は結局なすがまま店の外へ連れ出された。賑やかな繁華街をすり抜けて、いつの間にか人通りの少ない住宅街に出る。その間三島くんはずっと剣呑な雰囲気を纏い無言でどんどん歩いていく。どこへ行くつもりなのだろう。予想外のハプニングですっかり酔いの醒めてしまった私は少々不安を覚えつつ控えめに三島くんの名を呟いた。それを合図に三島くんの足が止まる。
「お前の隣に居た男」
「え、うん」
「あまり良い噂は聞かない……から」
「う、うん」
「…………あいつにお持ち帰りされるくらいなら俺がする」
「しれっとなに言ってんの?」
「……冗談だよ」
「真顔で冗談言うのやめて」
気付けば三島くんの怒りオーラはすっかり消えていた。つまり、私の身を案じてくれていた……ということだろうか?
「……だからって、あんなことして……会社中に噂広まったらどうすんの」
「俺は別に構わないけど」
「私が構うんですけど」
「……ごめん」
「あ、いや、別に怒ってるわけじゃないんだけど……」
「」
「は、はい」
手を握られたまま向き合うと全身が三島くんの影の中に入って暗くなった。三島くんの大きな瞳が良く見える。街灯が反射してきれいだな、なんて見惚れながらなんだかいつもと雰囲気の違う三島くんに少し緊張してぎこちない返事をすれば「なんで敬語?」と笑った。私はらしくもなく緊張していた。あれ、三島くんてこんなにかっこよかったっけ?いやかっこいいのは最初から知っていたんだけど。今日に限ってやたら胸がドキドキするのはどうしてだろう?ああ、お酒飲んだからか。動悸が激しいのはアルコールを摂取したことによって血管が拡張して云々。私はすべてをお酒のせいにすることでこの不可解な体の変調に無理やり理由を付けようとした。
「、俺と付き合ってくれないか」
「それは……」
「はいかいいえで答えて」
「っ……ずるくない!?考える時間くらいちょうだいよ」
「……わかった。その代わり、明日からは手加減しない」
「えっ」
「が悪いんだからな。なにやっても気付かないし、ていうか見てもくれないし、人の気も知らないで女の子紹介してくるし」
「ちょ、待って、なんの話?」
「だから余計にお前の顔が頭から離れなくなる」
「それは、席が隣だからなのでは」
「茶化すなよ」
「……ごめんなさい」
「好きなんだ、」
顔が灼熱地獄になっている。これがアルコールの効果でないことくらい、鈍感な私にもよくわかっていた。三島くんの真剣な眼差しは破壊力抜群だ。自分は三島くんに分かりやすく好意を示す女子社員たちを一歩引いた目で観察しているだけ、というのはただの思い込みだったらしい。漸く自覚した私はすでに答えを決めていたようで、小さく、でもしっかりと頷いた。
あなたのことなんて本当はなんにもしらないの::変身