二階堂くんの存在が気になり始めたのは右足を切られて入院しているあたりからだったと記憶してます。次々と身体の一部をなくしてモルヒネ中毒になる彼を見て、「この子はどうしてこんなことになったのだろう?弱いわけじゃないよな?」と思い、コミックスを見返しました。
読み返してみると二階堂くんは弱いどころか戦闘では結構優秀で、尾形上等兵や月島軍曹の観測手を務めるあたりでも「やっぱりやればできる子だった!」と自分のことのように嬉しくなったのですが、物語が進むにつれて文字通り身も心もぼろぼろになる二階堂くんを見ていて、どうすれば彼は幸せになるのだろうと考え始めたのが長編を書く切欠でした。
私は作品にはまると某百科事典やネットに上がる考察を読み込む性質でして、この長編を書くにあたりもちろん二階堂くんのものもいろいろと読みました。
その中で二階堂くんの幸せについて触れている方が数人いらっしゃいましたが、いろいろ見ていくうちに幸せの定義は人それぞれ違うということに気づかされました。考えてみれば当然のことなんですけどね。当初考えていた彼の幸せからどんどん変わっていき、それが長編にも影響する結果となりました。もちろんこれも個々人の考える憶測に過ぎませんし、このお話のように彼に寄り添う存在が原作にも現れればまた新しい展開になるかもしれません。そこは原作者様の物語であり私たちにはどうすることもできない部分ですが、夢小説という特殊な性質を持ったこのジャンルの中でだけでも、自分の考える「彼らの幸せ」を形にできたらいいなあと思いながら執筆させて頂いております。
トリップもので最も難しい問題はなんといっても、最後どうするの?という事だと思います。
私自身、夢小説というものに出会って十数年経ちますが、正直なところトリップもので完結している作品は片手で数えられるほどしか知りません。もちろん原作が未完であったり、長編大作であったりということもありますが。
今回の主人公は元の世界に帰るということは最初から決めていましたが、二階堂くんをどうするのか?で非常に悩みました。もし平成時代に来られれば戦いで命を落とす危険はなくなりますが、前述したとおりそれで二階堂くんは納得するのかと思うとどうしてもそうではない気がして、結果なんとなく悲しげな結末になってしまいました……。
自分の拙い文章では二階堂くんを格好良く書いてあげることができず、また、意図せず微妙に悲壮感漂うお話になってしまったのは残念な限りでありますが、何人かの方には楽しんで戴けたようで、嬉しいコメントを頂けましたのでそれだけが救いです。
今後また二階堂くんをお相手とした小説を書く機会があれば、今度こそもっとハッピーな感じの終わり方にできればと思っております。
ここまでお読みいただき、有難うございました。